流体力学から数値計算まで

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コラム:貴重な体験

 数値計算のことがいくらか理解出来るようになっていた頃、ふと一冊の数学の本が目に留まった。 タイトルは「ヒルベルト空間と量子力学。」。。。 難解そうなタイトルだが、当時の僕はいくらか計算のプログラムも組めるようになっていたので、 「数学なんてこんなものだろう。」と思っていたのかもしれない(いや思っていた)。 「そんなに難しいことは書いていないだろう。」と思い、「ふーん。」と手に取ってみた。 ぱらぱらとページをめくり、フムフムと読み始め、十数ページくらい読み進めた。そして思った。「で?」と。

 何となく分かったつもりで読み進めたが、結局、何が言いたいのか全く分からない。 「この作者は、何が言いたいんだ?」、「数学ってなんだ?」、「何のためにこんな本があるんだ?」等々、色んな疑問が湧いてきた。 そこには自分が知っている数学とは別次元のことが書かれていて、まさにカルチャーショックだった。 そして、思った。「自分が今まで勉強してきた数学は、ただの計算だったんだな。」と。

 という訳で、当時、時間もあった僕はその本を丸一冊書き写すことにした(正確には、ヒルベルト空間の部分)。 丸1日頑張っても、せいぜい10ページ進めば良い方だった。 1か月ほど続けているうちに、何とか写し終えた。写し終えて、特に自分が変わったという実感は湧かなかった。 暫くして、ある時ふとそれまでよく読んでいた数値計算の本を手にとって読んでみる機会があった。 その本はそれまで読むのにかなり時間が掛かっていたのだが、さらさらと読めることに気付いて、「すげー。」と思った。

 その後、トポロジーやルベーグ積分、偏微分方程式などの本を読んで、 数学科の人達がどんな勉強をしているのか位は理解できるようになったのかもしれない。 「こんな頭の使い方もあるんだな。」と理解できたことは、とても貴重な体験だった。


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カウンタ

(2011.3.15〜)